書籍の紹介
儀式でうたうやまと歌 木簡に書き琴を奏でる
著書:犬飼 隆(いぬかい たかし)- 内容紹介
遺跡から出土する歌を書いた木簡をもとに、古代日本ではやまと歌が儀式の音楽として歌われていたこと、儀式は中国から朝鮮半島を通じて日本の7世紀に導入されたこと、8世紀には儀式での歌が日本古来のものと認識され、そこから和歌が誕生したとする。和歌の起源について大胆な仮説を提示した作品。
- 情報
- 初版年月:平成29年7月 出版社: 塙書房
- 選定理由
本書は、現在日本の伝統的な文化と考えられがちな和歌について、民謡などでうたわれてきた「うた」が、7世紀頃に朝鮮半島を経由してもたらされた漢字文化のなかで儀式で歌われる「歌」となり、それが文学の「和歌」として定着したという、和歌の成立についての大胆な仮説を提示した書です。著者は本書のなかで、「歌」の書かれた木簡の分析から儀式で歌が歌われたことを論じ、日本の漢字文化における朝鮮半島の影響の重要性、古代日本の音楽制度の変遷、歌うとき琴を奏でる文化などを取り上げ、歌の成立について多角的な側面から総合的に検討し、自らの説を説得力のあるものとしています。また、歴史用語については現代の言葉に言い換えるなどして、難しくなりがちな古代の制度の歴史について、一般の読者に理解しやすいよう配慮もなされています。
本書は「和歌」成立以前の「歌」の姿について具体的に明らかにしただけでなく、その過程について、東アジアのなかで日本の漢字文化がどのように成立したのかを踏まえて歴史的に考察しており、日本の伝統とはどのように形成されたかを考えさせる著作ということができます。古代歴史文化賞大賞にふさわしい作品です。
感想を投稿する
※公序良俗に反する発言、出演者や特定個人への誹謗、中傷、広告や商行為、著作権の侵害となるメッセージは一切掲示いたしません。御了承ください。
この投稿へのコメント