第8回古代歴史文化賞の受賞作品が決定しました。
古代歴史文化に関する優れた書籍を表彰する「第8回古代歴史文化賞」の大賞および優秀作品賞が以下のとおり決定しました。
<第8回古代歴史文化賞 大賞>(1点)
顔の考古学異形の精神史
- 著者
- 設楽 博己(したら ひろみ) 吉川弘文館
- 概要
- 縄文時代の土偶をはじめ仮面・埴輪・土器など、律令時代までの造形物に見られる「鬼」や「イレズミ」といった特異な顔の表現について、その意味と果たした役割、変遷を論考する。そして、各時代の顔の分析・比較から、著者が専門とする弥生時代社会の特色を論じ、さらには現代社会が抱える課題にも通じることを指摘する。
<第8回古代歴史文化賞 優秀作品賞>(4点)
気候適応の日本史 人新世をのりこえる視点
- 著者
- 中塚 武(なかつか たけし)吉川弘文館
- 概要
- 古気候学の研究成果から、気候変動の時間的なスケールを数百年の「長周期」、数十年の「中周期」、一年から数年の「短周期」の3つに分けて歴史事象と気候適応の関係について考察する。特に従来行われていなかった「中周期」による考察を行う。また、今日的課題である地球環境問題への対応にあたっては、気候適応史研究が重要であると説く。
戸籍が語る古代の家族
- 著者
- 今津 勝紀(いまづ かつのり)吉川弘文館
- 概要
- 現代の戸籍制度から出発し、古代の戸籍の作成目的と性格、記載される人の範囲や身分などの内容を解説する。そして、記載内容の分析や周辺資料から、古代の人口数や平均余命、出生率、婚姻の実態と夫婦関係、飢饉や疫病などの状況を提示し、古代社会の厳しい環境の中で、人々がどのように生きてきたのかを明らかにする。
人事の古代史 ―律令官人制からみた古代日本
- 著者
- 十川 陽一(そがわ よういち)筑摩書房
- 概要
- 古代日本において、国家運営のために取り入れた律令官人制について、奈良時代を中心とした官人統制の仕組みと歴史を概観する。その上で、官職につけない多くの官人「散位」の存在を紹介し、古代国家にとって官人がどのような存在であったのかを論じる。平安時代に至るまでの律令官人制の定着と展開を通観した書。
万葉集に出会う
- 著者
- 大谷 雅夫(おおたに まさお)岩波書店
- 概要
- 現在も広く親しまれる『万葉集』の従来の読みと解釈について、近世期国学の注釈史研究や中国文学との比較研究を踏まえて検証・訂正し、歌を詠んだ作者の思いに迫る。また、万葉集の特色となっている「擬人表現」「相聞歌」などの紹介や、これまであまり注目を浴びなかった作品にも触れて、万葉集の多彩な魅力を伝える。
<第8回古代歴史文化賞 特別賞>(1点)
考古イラストレーター 早川和子
- 趣旨及び対象
- 国民の古代歴史文化に関する関心を高めるため、歴史文化に関する興味・関心の拡がりや理解の促進などに大きく貢献した人物、作品及び活動などを、「古代歴史文化賞特別賞」として顕彰する。
- 受賞者
- 考古イラストレーター 早川和子(はやかわ・かずこ)