第7回古代歴史文化賞の受賞作品が決定しました。
古代歴史文化に関する優れた書籍を表彰する「第7回古代歴史文化賞」の大賞および優秀作品賞が以下のとおり決定しました。
<古代歴史文化賞大賞>(1点)
「古今和歌集」の創造力
- 著者
- 鈴木 宏子(すずき ひろこ) NHK出版 本体1500円
- 概要
- 「こころ」「ことば」「型」という3つのキーワードをもとに、『古今集』の歌、歌集全体としての特徴を読み解こうとする。特に選者であり、歌人でもある紀貫之の役割を重視し、歌の「配列」に着目する点は、『古今集』研究に長年にわたって取り組んできた著者ならではといえる。単なる注釈書ではない、『古今和歌集』の世界に読者を導く書である。
<古代歴史文化賞優秀作品賞>(4点)
埋もれた都の防災学ー都市と地盤災害の2000年ー
- 著者
- 釜井 俊孝(かまい としたか) 京都大学学術出版会 本体1,800円
- 概要
- 古代から近現代までの開発の歴史や社会的背景を、地盤災害に焦点をしぼり、丁寧に解説する。多分野連携での新見解も盛り込みながら、地盤災害がその土地と人間の歴史を反映すると説く本書は、近年とみにいわれる防災について、ヒントを与えてくれる書である。
古代日中関係史 −倭の五王から遣唐使以降まで−
- 著者
- 河上 麻由子(かわかみ まゆこ) 中央公論新社 本体880円
- 概要
- 5世紀の倭の五王の時代から菅原道真による建議で遣唐使派遣計画が白紙にされた9世紀末までの日中交渉の歴史を、著者の専門とする仏教を切り口に紐解く。東アジアのみならず、アジア全体を視野に入れ、日中関係を概観し、遣隋使派遣による日本の対等外交指向などの通説を乗り越えようとする試みが本書の特徴である。
縄文時代の歴史
- 著者
- 山田 康弘(やまだ やすひろ) 講談社 本体920円
- 概要
- 1万3000年にもおよぶ縄文時代を、画一的ではなく、列島内で地域差、時期差をもちつつ展開したとして文化の多様性を述べる。DNA分析などの理化学的成果にも目配りしながら、気候変動との関わりのなかで縄文時代を論じる本書は、現代と比較し縄文時代を「ユートピア」と美化する傾向を否定する、縄文時代の概説書である。
風土記 −日本人の感覚を読む−
- 著者
- 橋本 雅之(はしもと まさゆき) KADOKAWA 本体1,600円
- 概要
- 『古事記』や『日本書紀』を中心とする国家レベルの歴史ではなく、「風土記」の記す地方目線(「風土記史観」)を通じて、多様な文化や神話・伝承を支えた村里レベルの歴史を探ろうとする。国文学者の視点から、「風土記」から読み取ることができる古代の人々の心性にも触れ、「風土記」の魅力を伝える。
※五十音順