書籍の紹介
人事の古代史 ―律令官人制からみた古代日本
著者:十川 陽一(そがわ よういち)- 選定理由
本書は、位階にもとづく官位制・官人制が天皇を中心とした古代中央集権国家の骨格をなすことと、これが定着していく過程を主に奈良時代から平安時代まで通観したものです。
ともすれば煩雑な支配体制や人事制度を丁寧に整理し、これに関わる人事の具体的な有り様、高位高官の人事、あるいは位階があっても官職につけない散位などの具体例を取り上げ、官職登用の仕組みや生活手段、古代官人制の実態と展開、ひいては古代国家権力の地方への浸透とその変容や、さらに中央の都城の変遷・変貌にまでも視野に入れたものとなっています。
古代日本における国家支配を人事制度から見ていこうとする本書は、従来にはない新しい試みで、生き残りをかけた官人の姿を具体的に描くことで律令制度をより身近に感じさせる作品ともなっています。こうした視点での官人制を取り上げたものはこれまでになく、大変意義深い作品として、優秀作品賞にふさわしいものです。- 作品の概要
古代日本において、国家運営のために取り入れた律令官人制について、奈良時代を中心とした官人統制の仕組みと歴史を概観する。その上で、官職につけない多くの官人「散位」の存在を紹介し、古代国家にとって官人がどのような存在であったのかを論じる。平安時代に至るまでの律令官人制の定着と展開を通観した書。
- 情報
- 初版年月:令和2年6月10日 出版社: 筑摩書房 本体:860円
- 著者のプロフィール
1980年、千葉県生まれ
慶應義塾大学文学部准教授
博士(史学)
専門は日本古代史
著書に『日本古代の国家と造営事業』、『天皇側近たちの奈良時代』(ともに吉川弘文館)などがある。
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