書籍の紹介
戸籍が語る古代の家族
著者:今津 勝紀(いまづ かつのり)- 選定理由
本書は、残された古代の戸籍と周辺資料の詳細な分析を通じて、古代日本の人口動態や平均寿命などを推計し、その基盤となった生活の根幹である婚姻、夫婦関係などの家族構成とその在り方や動態を掘り下げることで、古代社会の全体像を呈示しています。とりわけ繰り返される、飢饉、疫病などによる人口減少が戸籍上にも反映されている例が多数みられるなど、厳しい社会環境の中で古代の人々がどのように生き延びる努力をしていたか、などを戸籍に表された家族の有り様を軸に読み取る新たな視点を示した作品です。
本書は、今日の高齢化・人口減少などが問題とされるなかで、個人を超えた社会の継続という視点から古代の家族の在り方、人々のライフスタイルや生存、人口の問題に目を向け描き出しているもので、今後の歴史学が、何を明らかにしていくべきか、目指すべき一つの方向性を示すものとして高く評価でき、優秀作品賞にふさわしいものです。- 作品の概要
現代の戸籍制度から出発し、古代の戸籍の作成目的と性格、記載される人の範囲や身分などの内容を解説する。そして、記載内容の分析や周辺資料から、古代の人口数や平均余命、出生率、婚姻の実態と夫婦関係、飢饉や疫病などの状況を提示し、古代社会の厳しい環境の中で、人々がどのように生きてきたのかを明らかにする。
- 情報
- 初版年月:令和元年10月1日 出版社: 吉川弘文館 本体:1,700円
- 著者のプロフィール
1963年、東京都生まれ
岡山大学文明動態学研究所教授
博士(文学)
専門は日本古代史
著書に『日本古代の税制と社会』(塙書房)、『東アジアと日本』[共著](KADOKAWA)などがある。
感想を投稿する
※公序良俗に反する発言、出演者や特定個人への誹謗、中傷、広告や商行為、著作権の侵害となるメッセージは一切掲示いたしません。御了承ください。
この投稿へのコメント