書籍の紹介
気候適応の日本史 人新世をのりこえる視点
著者:中塚 武(なかつか たけし)- 選定理由
本書は、古気候学という過去の気候を研究する立場から、気候の変動に対して、当時の人々がどのように適応したのか、もしくは適応できなかったのか、という因果関係を追求するものです。
数百年単位の長周期、数十年単位の中周期、数年単位の短周期の3つの時間的周期の中で、とりわけ、近年その実態が解明されつつある数十年単位の中周期が、大きな歴史的な変化と良く対応することを示すことで、古気候学の著しい進展が、従来ともすればその背後に追いやられていた自然環境、とりわけ気候変動が人類の歴史に大きな影響を持つことの意義を正面から示すものです。年単位に迫るほど詳細に復原されたデータを用いて説明される歴史の転換点と気候変動との因果関係は、歴史学、考古学、年輪年代学など多分野との学際的共同研究の成果であることも重要な意味を持ちます。
今日我々が直面している地球温暖化や、人類環境への関与などにも言及することで、今後の考古学・歴史学研究の方向に新しい息吹を吹き込む意欲的な作品となっており、優秀作品賞にふさわしいものです。- 作品の概要
古気候学の研究成果から、気候変動の時間的なスケールを数百年の「長周期」、数十年の「中周期」、一年から数年の「短周期」の3つに分けて歴史事象と気候適応の関係について考察する。特に従来行われていなかった「中周期」による考察を行う。また、今日的課題である地球環境問題への対応にあたっては、気候適応史研究が重要であると説く。
- 情報
- 初版年月:令和4年3月1日 出版社: 吉川弘文館 本体:1,800円
- 著者のプロフィール
1963年、奈良県生まれ
名古屋大学大学院環境学研究科教授
博士(理学)
専門は古気候学、同位体地球化学
著書に『酸素同位体比年輪年代法ー先史・古代の暦年と天候を編む』(同成社)、『気候変動から読みなおす日本史(全6巻)』[編者](臨川書店)などがある。
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