書籍の紹介

「古今和歌集」の創造力

「古今和歌集」の創造力

著者:鈴木 宏子(すずき ひろこ)
選定理由

本書は、日本最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』を、紀貫之が記した仮名序冒頭にみえる「こころ」と「ことば」、そして歌に共通する表現・着想などの「型」という3つのキーワードから紐解いていきます。その過程で『古今和歌集』に収められたそれぞれの歌はもちろんのこと、歌の配列や巻の構成にいたるまで、編纂者である貫之が緻密に計画し、体系だったまとまりある作品として『古今和歌集』を完成させたことを明らかにしています。また、本書掲載の『古今和歌集』の歌には、理解を助けるための過不足ない現代語訳がつけられているだけでなく、「百人一首」に収められているものが多く採用されており、すぐれた文章力によって、一般の読者が興味をもって読み進めることができる著書となっています。
『古今和歌集』が日本の和歌の一つの定型となり、またそれによって生み出された感性や感覚などのさまざまなものが現代にも受け継がれていると説く本書は、単なる『古今和歌集』の概説書や注釈書に留まらず、日本文化論も射程に入れた書籍でもあるといえ、古代歴史文化賞大賞にふさわしい作品です。

作品の概要

「こころ」「ことば」「型」という3つのキーワードをもとに、『古今集』の歌、歌集全体としての特徴を読み解こうとする。特に選者であり、歌人でもある紀貫之の役割を重視し、歌の「配列」に着目する点は、『古今集』研究に長年にわたって取り組んできた著者ならではといえる。単なる注釈書ではない、『古今和歌集』の世界に読者を導く書である。

情報
初版年月:平成30年12月
出版社: NHK出版
本体:1500円

著者のプロフィール

1960年、栃木県生まれ
千葉大学教育学部教授
博士(文学)
専門は平安文学、和歌文学
著書に『古今和歌集表現論』、『王朝和歌の想像力』(ともに笠間書院)、『和歌史を学ぶ人のために』[共編](世界思想社)などがある。

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